マイナンバーカードと健康保険証の統合果たしてどうなる?

いま巷で、問題になっている「マイナンバーカードと健康保険証」を統合する話。

特に、今回の件で全国各地で問題になっていることを箇条書きにしながら、実務に携わっている経験を踏まえ、書いてみます。

政府方針

2024年度中の廃止(現時点では2024年12月8日頃を予定)

  • マイナンバーカードを保有しない方
    • 健康保険の認定証(仮称)を発行(1年間の期限付き・更新については現時点では未定)
  • マイナンバーカードを保有している方
    • 健康保険証の紐付けを行わないと健康保険証として使えない
  • 現行の健康保険証は上記期日をもって「無効」

とのことであり、本件については私が加入する保険組合(協会けんぽ)に確認したところ上記にような回答でした。ただ、協会けんぽ側も、今後どのようになるか不明瞭なことから、明確な回答はできない。

というところで、正直なところ参っています。

今回の問題点

今回の問題点をいろいろ報道されている中で、言わずとしてわかっていること、本当に大丈夫なのか?ということをまとめましたので、次の通り箇条書きします。

(1)マイナンバーカード保険証にNGとする主な理由

※これはあくまでも筆者の個人的な意見であり筆者が所属する会社の意見ではございません。

  1. そもそもマイナンバーカードを持っていない(根本的なお話で、まだ国民の3割が保有していない)
  2. マイナンバーカードと健康保険証を紐付け(連動)させないと健康保険証として使えない(医療機関の端末からその場で登録も一応可能)
  3. マイナンバーの番号がカードに記載され、罰則もあるのになぜ表記し続けるのか?(カードから番号表示を最初から抹消してほしい)※実際のところ、マイナンバーカードを第三者が取得したところで、使い道が無いにもかかわらず、法的な罰則が先行して持参しない(私は運転免許証を持っているため、持ち歩く理由が無い)
  4. マイナンバーカードを医療機関に提示したことによって、医療機関情報以外の税務や財産などの情報を閲覧できるのでは無いかという懸念。(ルール上できないが、理論上マイナポータルなどでカードリーダにかざすと、必要情報の入力において閲覧は可能)
  5. もともと有効期限がない社会保険(協会けんぽ)にたいし、マイナンバーカードは数年おきに更新が必要で、さらに更新手数料も必要となる。さらに、手続きを行うためにその都度行政機関へ出向き、更新手続きの書類の記載が必要になる(現時点での運用)
  6. 社会保険がなぜ重要かということを一番理解していないのは、政府機関では無いだろうかと思う。健康保険証(とくに社会保険)において、発行者(協会けんぽと適用事業所)が両方記載されることにより、客観的にどこの会社へ所属しているかを把握することが可能だった。特に、信販会社においては、国民健康保険か社会保険かを確認することは多々あり、一種の身分証明書としての役割を果たしている。
  7. 社会保険・国民健康保険ともに、共通していることは、申請は窓口か郵送で行い、申込に関する手数料(いわゆる事務手数料)は無料で、運営費がすべて毎月賦課される保険料で賄われているこは非常に大きい。

(2)医療機関側におけるマイナンバーカード保険証に関する実情

筆者は、実際に医療機関向けのマイナンバーカード読み取り装置の設置を行った実績があり、実務で利用している医療機関の保守を手がけています。

その中において、実際に発生した問題は次の通り

  1. マイナンバーカードリーダーのシステム保守は5年でいったん打ち切りとなり、それ以後は医療機関側でリプレイス(交換)が必要となる(予定)。
  2. マイナンバーカードリーダーを読み込むが、操作が非常に多く、かえって煩雑になっている。
  3. マイナンバーカードをつかった保険証から読み取った情報と健康保険証に記載されている情報が一致せず、結局健康保険証の提示を必要としたケース。
  4. マイナンバーカードリーダーを導入して、保険点数を加算できるが結局のところ、患者負担が増えていることをあまり知られていない(対象月の加算額4点=40円)
  5. (1)で提示して、マイナンバーカードリーダーを使わなくても、保険証番号で確認ができるため、実際はマイナンバーカード自体が必要無い。
  6. 健康保険証に保険証の記号番号を記載した磁気ストライプ・QRコードやバーコード・ICチップを搭載し、マイナンバーカードリーダーの基幹システムである(オンライン資格確認システム)に読み込む方が現実的。
  7. マイナンバーカードで運用を行うならば、Suicaのようにタッチして、保険証番号を読み取る方式への移行。これによって医療機関側は患者システムに自動的に患者情報が表示されるか、あるいは保険証番号がレシートで印字するシステムは理論上可能。

つまり、今回の件において、利用者側・医療機関側においてマイナンバーカードを利用するメリットがどこにあるのか?をもう少し考えてほしいところです。

実際に、(2)-3については、医療機関よりSOSがあり、現地へ訪問したところ、保険証とマイナンバーカードの情報どちらが正しいか判断を委ねられたため、私は迷わず保険証が正しいのでその内容で記録してください。とその上で、マイナンバーカードの不備があったことは付箋または記事欄で記録を残し、情報が上書きにならないよう留意してください。とアドバイスいたしました。

マイナンバーカード保険証の今後

まず、この問題を整理するとマイナンバーカードにおける情報があまりにも多すぎます。

現時点、把握していることとして次のことが可能です。

  1. 写真付き身分証明書(当初より)
  2. 電子証明書(当初より・本人確認の核となる情報)
  3. マイナンバーの表記(当初より)
  4. 税務(運用済み)
  5. 年金(運用済み)
  6. 給付金用銀行口座(運用済み)
  7. ポイントカード(運用済み・ポイント給付に使用)
  8. スマホ連動(運用済み・スマホにマイナンバーカードの機能を搭載)
  9. 健康保険証(運用済み・2022年より順次開始)
  10. 運転免許証(来年度以降運用予定)

を搭載することがあげられます。特に、社会保険に加入の場合は、原則としてマイナンバーカードの登録を求められ、発行の際に、マイナンバーカードとの紐付けが行われています。

今回の件において、これほど用途が限られるサービスも珍しいです。

実際によく使われるのが1~3の部分で、一番のポイントとなるのは、2の電子証明書の部分があげられます。

特に自営業者などでマイナンバーカードのメリットは、住民票・印鑑証明書等を取得することは多く、最寄りのコンビニエンスストアで取得可能となれば夜間・早朝も対応できることを踏まえるとマイナンバーカードを使うメリットは格段に上がります。

操作もすべてセルフで行うことからも、この利点は非常に大きいといえます。

つまり、現時点において各人「マイナンバー」を把握することは大事だが、その番号を用いて活用することがあまりにも少なすぎる。ということです。

結局のところ、マイナンバーを医療機関が入力しても「情報」が反映されることは無く、単なる数字の羅列にしか過ぎず、マイナンバーをみて本人確認できるのは、政府機関しか確認できないのであれば必要性はますます薄れてしまいます。

健康保険証問題について提言

健康保険証をまずは、段階的に廃止するならば、国会議員と所管の政府関係者の国家公務員共済から来年早々に始めてその実証結果を公表を求めます。その上で、医療機関・共済保険を持つ被保険者からの問題がないことを包み隠さずオープンにしてその後、来年以降開始するかどうかを決めてほしいです。

せっかくなら国民投票を行い、健康保険証存続の是非を問うのも一つではないだろうかと思うのです。

健康保険証の問題をマイナンバーカードで解消できる本来の理由を明らかにするべき

実際問題、健康保険証に関わる事件として「詐欺」が非常に多く、写真付きがほぼ皆無な健康保険証の問題点はかつて健康保険証が「世帯毎」だったことに起因し、健康保険証には「療養記録」を記載する欄もあり家族で健康状態を確認することが当然という時代でした。

しかし、家族が遠隔地にいるなど必ずしも世帯毎に健康保険証1枚で済みませんでした。

そのため、健康保険証を世帯毎から個人ごとの名刺サイズに変更し、財布に収納しやすいようにサイズも変わりました。

国民健康保険は、有効期限が1年間のため紙の保険証が主流ですが、社会保険は耐久性の観点からプラスティック製の保険証となっており、破損などが無い限り無期限です。

健康保険の不正受診や資格がない受診者を医療機関が判断することは実際問題不可能でした。

(参考)マイナカードで「不正請求が減らせる」「なりすまし防止」は本当か – 全国保険医団体連合会 (doc-net.or.jp)

実際、本当に不正請求が減らせるか、なりすましの防止にどれだけ貢献するかという観点について、興味深いことを書いてありました。

>診療報酬の再審査のほとんどは、「保険加入の切り替えタイミング」と「記号番号の転記ミス」

ということは、デジタル化が進んだとは言え、手作業で年間に20億件の入力を行っていると(国民一人あたり、年間の受診数は約16件)言う数字にもただただ驚きですが、入力ミスが少ないのは保険証の番号を入力するのは最初のみでそれ以降は原則として入力しないため。

しかし、このマイナンバーカードを使って(実際はオンライン資格確認システム)を用いて、受信状況や本人確認の容易さが元々の導入目的であった。ことは事実です。

つまり、マイナンバーカードで搭載されているICチップの情報を健康保険証に搭載、それができなくてもQRコードやバーコードを健康保険証に印字するまたは、シールを配布するだけでも十分事足りると思います。

マイナンバーカードリーダーというより保険証の有効・無効を判断できるシステムを医療機関へほぼ全台導入していることを踏まえると、オンライン資格確認システムを積極的に活用できるシステムをもっと行う方が現実的でないだろうかと考えます。

本件については、筆者がいくら声高らかに申し上げたところでなんとかなるはずもなく、ただ現時点でわかっていることは、社会保険を交付されている人は2024年以降も脱退しない限りは保有し続けるだろうし、医療機関も無効なので必要ありません。ともいえません。

なぜならば、医療機関は「保険者番号」が必要なので、番号の確認に手間を取るマイナンバーカードよりも保険証の番号を確認した方がずっと現実的だからなのです。

その動きを察知したかのように、昨今医療機関の職員に「国保」を採用していたところも、順次社保へ移管しているケースが目立ちます。

保険料どうこうの理由ではなく、上記の国保発行停止になって不利益になるよりは、発行終了後も保有できる(と思われる)社保を選んだのでは無いかとみています。

今回の件を推進するならば、社会保険・国保ともに「顔写真付き」のカード+ICチップまたはQRコードが読み込める仕様へ切り替えて、オンライン資格確認をつかってタッチで保険証確認ができる仕様にしてほしいと考えます。その上での、マイナンバーカードの発行をオンラインでできるようにして、マイナンバーの番号を読み込むには、ICカードリーダーか住民票取得に統一して、カードに記載しない方法が現実的です。それにあわせて、不正受給・受診ができない仕組みを確立する方が先ではないかと思います。(実際マイナンバーカードの番号でなく、電子証明のICチップを利用することを書いてあることからマイナンバーカードでなくても良いことを示唆しています)

もっとも、オンライン資格確認システムにおいて「受診履歴・調剤履歴」は保険証番号から確認できるものの、情報確認が翌々月以降順次確認可能になります。(診療報酬は原則月末締め翌月10日提出のため、正式に確定するのは翌々月以降の見通し。閲覧が翌々月以降になる理由は割愛)

参考)オンライン資格確認等システムの導入に関する医療機関・薬局システムベンダ向け説明会_投影資料一式 (mhlw.go.jp)

最後に

マイナンバーカード自体が悪いということではなく、「医療機関」「利用者」ともに利便性が高いもので、なおかつ「不正」が発生しにくい仕組みを構築するならばマイナンバーカードでも「できる」程度にとどめ、

従来からの健康保険証を「顔写真付き」と「ICチップ」または「QRコードつき」を義務化して不正防止と利便性が高いものを今の枠組みで行っていただいた方が混乱もなく、安心かつ質の高いサービスができると考えます。不正がある場合は、3倍徴収かつ保険証没収にして、もっと厳罰化しつつマイナバーカードも保有しやすく、番号(マイナンバー)を記載しないナンバーレスにするのが先決ではないかと痛切に感じます。