【アーカイブ】障害者とコンピュータ~ALS患者とパソコン

今回のテーマは筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者と音声支援ソフトに関する話題です。

2020年現在において理解を深めるため、一部補足をいたします

原文は当時のまま、24年ほど前に執筆した原稿です。

この原稿は以前ALS患者の生活について直に携わった頃の話です。執筆当時は、まだ高校生だった私の視点です。考察が浅い部分や不適切な表現については当時の感性としてご覧ください。

「障害者とコンピュータ」

 

「ビデオゲームが有害だって?昔、ロックンロールもそういわれたもんさ」
宮本 茂 氏(任天堂株式会社 ソフトウェア開発のチーフ プロデューサ)
みなさんは、ビデオゲームをどのような感覚で遊んでいますか?障害者とコンピュータどこにどういう接点があるのでしょうか。これについて、一つ考えて欲しいと思います。
私は先日、ある障害者の家を訪ねました。その方は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という重度障害を持っていました。症状は体が思うように動かないうえ会話困難な方でした。
そこで、少しでもコミュニケーションを図れるようにするために、意思伝達装置(トーキングマシン)を行政側が導入し、その指導を私がすることになったのでありました。納入は私が来る2週間ほど前にすでに行われておりました。
私は、彼のことを少し聞いていました。話によると、
「ファミコンをすることが出来る」と。
これが功を奏すとはこの時点では全く想像もしていませんでした。
早速、指導を始めました。起動するとWindows3.1が上がってきました。そこから、音声装置が起動し、動作し始めました。起動はしましたが、思うように動きません。困ってから、マニュアル、ソフトをとにかく見て、あれこれしましたが、うまくいきませんでした。私が、よく分からず、席を外すと彼が手足を使い、動かし始めました。私は「大丈夫かな?」と見ていましたが、さっき出来なかった私よりうまくやっていました。
この時点で私は、「彼に対して説明は必要ないな」と思いました。
彼はそのうえ、大して役に立たなかった私に対し、操作を続け「本日は、お忙しいところをお越しいただきありがとうございました」と入力し、私は目頭が熱くなる思いがしました。
このとき、ふと辺りを見回しました。なんとSFC(スーパーファミコン)が置いてあるのです。私は、ピンときました。私は、「これに馴れていたから、あれを使うことが出来た」と、推察しました。
私は、元来ゲーム機は道楽のために存在すると思いましたが、他の効果として社会進出、集中力を養うことも出来ると言うことに気付きました。
彼はコンピュータ制御を自分のものに出来た背景に、ファミコンが影響していたのではないでしょうか。
私たちは、五体満足を当たり前のように感じています。しかし、中には、そのような恩恵にあずかれなかった人もいます。
ゲーム機のもたらす影響は、どんな人に対しても大きいと思います。
みなさんの周りにも、話すことが困難な障害者の方々はおられると思いますが、彼らを陰で支えているのが、人でありゲーム機であると思います。
これからも、暖かい手をさしのべて欲しいと思います。

July 14,1996 おおくす@ながさき

 

この原稿は1996年7月に執筆したものです。

当時、ALSに関する情報は何もなく、難病の一つの印象でした。

18歳のわたしには衝撃的な出来事でした。

今の歳になって同じことができるか?と言えば、正直言いまして自信がありません。

今回のALSの事件について、あれこれ論じることはできません。

ただ、ALS患者は完全介助を要するため、相当な労力と思います。

暖かい手をさしのべてと書いた真意は、過酷な状況でも必死に生き続けている人を目の当たりにした事情もあります。

その後、まだパソコンの性能が不十分だったこともあり、何度も何度も修理して納品しました。

機器代についても当時の相場から推定総額100万円は超えたと思います

ノートパソコンと音声装置と制御ソフトの組み合わせも2020年の現在ならもっと簡単にかつ安価で提供できるだけに隔世の差を感じます。

ALSは決して他人事でなく、いつ発症しても不思議でありません。

現在も社会復帰し寛解できる治療法がないときいてます。

なす術なく看病を続ける御家族の心労を思うと、かける言葉もありません。

1996年当時は、SNSもなく、ALS患者の存在も一部の人しか知らなかったと思います。

いまは、場所や環境に関係なく情報発信ができるようになりALSを始め様々な難病も知られるようになりました。

わたし自身、正しい情報は実際に見聞するしか得られないと考えています。

情報の本質は、立場によって変わると思います

 

ALSについて発信する情報についても

  1. 本人
  2. 患者の家族
  3. 患者に関わる医療や福祉の関係者
  4. その他患者と関わりのない人々

このような視点があります。わたしの場合は、知ってるということで言えば3です。しかし、実際は4じゃないでしょうか。

それほど、正しい情報は無いのです。

今回の事件は、大多数の方々がその存在を知る術がないと思います。

わたしもその一人です。

 

色々考えさせられました。

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