非常に難しい話題の一つに「ネット犯罪」の壁について
現在、ある事件で捜査依頼をかけていた案件があり、詳細はまだ詳しくかけませんが、表題の通り
「ネット犯罪」として立件するに難しい現実があります。
例えるならば、トンネルなどの壁に落書きをする事はどんな犯罪に該当するか?ご存じでしょうか?
意外かもしれませんが「器物損壊」として立件しており、その理由は「現状回復するために多大な労力」を要するためだと言います。
トンネルのコンクリートに一度ペイントなどで落書きされてしまうと、その上から塗り直すと言う方法しかありません。
しかし、その対策も何日もかけて原状回復してもまた同じようになってしまえば意味が無いのです。
ネット犯罪もこういった状況に大変似ており、実際のところいたちごっこに近く、立件してもあまり大きな犯罪として取り扱うのが難しい。そういった現状を抱えています。
特にITに明るい警察関係者が少ない事からか、明確に「犯罪」としてとらえられる事案以外は「話を聞く=相談」である為、回答を求めてもうやむやにして結局徒労にくれる事も多々あります。
犯罪を助長する事で今回の事を書くわけでありません。
今の状況で警察が立件しやすい?案件は
「(1)金銭的被害が発生する詐欺」
「(2)個人情報をネット上で公開されるプライバシー侵害」
「(3)事実無根の風評を書き散らす名誉毀損」
「(4)他人のIDを盗用しなるなりまし行為」
「(5)殺人予告など危害を与える可能性のある言動=威力業務妨害」
つまり、これらに該当はしないが、実害を被る案件については
「被害として確認はできるが、犯罪でない」
と言うまさに玉虫色の回答となっており、これが犯罪の温床となっているようです。
さらに、その犯罪を助長する上で快適?なポジショニングが「ネットカフェ」の存在です。
IPアドレスを精査すると、ネットカフェがリストアップされますが、ネットカフェの運営会社は「警察」に対しては、個人情報など必要事項をすべて回答しても、被害者である私たちには一切その情報は開示しないという。その上、結果についても回答はしなくてよいとか。
それは「捜査上で知り得た情報は、被疑者で無い限り公表されない=被害者である私に対しても開示する義務はない」と言う理不尽な結論であるのです。
つまり、ネットカフェとしては「警察」には情報開示はしたけど、我々には「開示しない」と言う訳だ。
すなわち、被疑者であれば「新聞などで公表」されるが、被疑者候補については「被疑者の個人情報」を守ると言う理由から開示されない仕組みである。
結論からして、上記のような犯罪として立件されておかしくない案件でも、警察当局の能力が低ければ「立件」される事もなく、捜査に遡上されることもないと言う事になるのです。
これはなぜならば日本は「法治国家」であるのと同時に「疑わしきは罰せない」「加害者のプライバシーは保護する」という前提である故、被害を被っても「法に反してなければやって良い」という結論になるからです。
現在の情報社会において、加害者優位な状況があります。
情報発信をする私たちにとってトラブルはつきものです。
当然でありますが、こういった案件をこれから手がける際、警察当局とどう向き合うかは重要な課題になると推測されます。
ネット犯罪に対し、立件もできない長崎県警のふがいなさは今に始まったことでなく、さかのぼれば創業してからずっとこの案件には悩まされてきました。
立件できるか?と言うところまでこぎ着けても結局、警察当局によってうやむやにされ「被害届」の受理はおろか、話を聞いた=相談。と言う程度で終わっているのです。
逆に言えば、その程度で済んでいるからまだマシととらえるべきかもしれません。
本当に深刻な問題は「事件の真相」は何かを見た際に「軽微」なトラブルは警察にとって「事実確認」は行っても、立件に至らないケースが多い印象を受けます。
今回のやりとりで一つわかった事は
*警察は「自分の得意分野以外はうやむやにする」
*加害者は「犯罪にならないとわかっていてネットカフェを利用した」
*ネットカフェ運営者は「警察に詳細な情報を提供しても外部に流出しない」
といった事が浮き彫りになりました。
つまり、警察に情報提供するのは「形式上」問題ないとしながらも、核心に触れる部分については開示しないと言うのは、加害者保護という点では正義かもしれません。(この点は今回の事に限らず昔からです)
つまり、被害者に対し、加害者の情報を開示すると言う事は新たな「事件」に発展する事はほぼ確実で、警察はそれを恐れている。加害者が刑事事件になる場合であれば、立件せざる得ないが、刑事事件として該当しなければそのまま放置。と言う結論となります。(実際は違うとしても、連絡がない時点でそうとられて仕方ありません)
この件について、決して大げさな事でありません。過去の事例を見て、最初はいろいろ相談したが、最後は殺人事件に発展したと言う記事を散見します。すべてが初動に問題があったのではないか?と言うのが私の持論です。
ネット犯罪がどの基準で「立件」かどうかを見極めるのは我々専門家でも難しいものです。
警察自体が「法律に抵触するか」どうかの基準であり、法解釈がどの程度まで進んでいるかは大変難しく感じます。
冒頭に触れた「壁の落書きが器物損壊」である解釈は、未だに理解できず私は「拡大解釈でないのか?」と思うくらいです。
ただ、法的根拠として「原状回復が容易でなく、回復に費用が発生する」行為は一律に「器物損壊」と扱うことから行けば、今回の案件も「器物損壊」としてできないものか。
と考えてしまうのです。
再三申し上げるように、インターネットの犯罪は年々巧妙かつ大胆になっています。
犯罪行為として立件されないと言う長崎県警からの結論が出れば、今後同様な案件における対策の指針ができるのではないか。と見ています。当然ですが、インターネットは「匿名」でありません。
しかし、事件性があっても「法に触れない行為」ならば、それは「無罪」であり、被害者は「泣き寝入り」するしかありません。
仮に被害者(今回は私ですが)が、ネットカフェである事を突き止めても、加害者である犯人を突き出す事は100%ありません。
また、警察を経由して照会をかけても、警察には個人情報が渡りますが、それ以上の展開はないと推測されます。
(ネットカフェ側で相応の処分を科すかどうかは私の知るよしもありません)
ネットカフェが犯罪の温床であり、(1)~(5)にどれか一つでも当てはまる事ならば、すぐに立件される。と考えて間違いありません。逆に言えば、それ以外の事であれば立件はおろかどうなるか考えなければなりません。
犯罪対策は勿論の事、今後どう振る舞うか考えなければいけない時期にきたようにおもいます。