ベネッセ事件で、お詫びの金券500円が不服として、裁判という話を見て、実際に民事訴訟し、それからの流れを考えた時、実際のところ裁判ってどんなものか?
昨年、提訴した経験を元に民事訴訟の流れについて少し触れたいと思います。
http://news.livedoor.com/article/detail/9467687/
ベネッセの話に限らず、訴訟のテーマは様々ですので、必要になったら是非ご活用のほどを。
1 裁判費用はどのくらいかかるか?
一般的に、裁判費用は10万円未満で1000円、以降10万円毎に1000円ずつ加算されます。簡易裁判所の場合は140万円以下の訴訟となり、少額訴訟の場合は60万円未満と請求金額に制限があります。
→http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_minzi/minzi_04_01/
訴訟額が大きい場合は、個人で訴訟せずに弁護士を通じて訴訟する事が賢明です。個人で行う限度は、簡易裁判所で取り扱える金額にとどめるのが経験上良いと思います。
2 裁判費用はどうやって納めるのか?
訴訟費用は、収入印紙で行います。購入先は、最寄りの郵便局窓口で取り扱っていますので、額面分の収入印紙を購入しましょう。
ちなみに、コンビニでは200円の収入印紙しか取扱が無いため、面倒でも郵便局へ行く事がオススメです。
3 郵券(郵便切手)はどのくらい必要か?
一般的な訴訟でかかる、予納切手ですが、これが結構面倒で、被告が1名の場合は、予納切手は4500円が目安です。
支払督促の場合は、半額になりますが、2名の場合はその分郵送料が増えますので、2倍の9000円~10000円分を予納する事が望まれます。
予納切手の目安ですが、私の場合このような表を作り裁判所へ提出しました。
印紙・切手明細
予納郵便切手 訴訟相手 1 名
500円 × 4枚 =2000円
82円 ×15枚 =1230円
52円×15枚 =780円
20円×15枚 =300円
10円×15枚 =150円
2円×15枚 =30円
1円×10枚 =10円
合計 4500円
訴訟用収入印紙
1000円
実際、裁判所にて使われた切手の枚数から計算すると、平均半分使用される計算でした。
4500円予納して2000円前後は裁判終了後に返却されますので、実際は3000円程度使われる計算でした。
私の場合は、裁判所書記官とのやりとりで、特別送達の通数を減らした事で、その分の郵送料が減った事も起因しています。(ただし、予納切手のほかに、裁判所への郵送実費が相当かかっているので実際は4500円は超えています)
予納切手の為に、個別に封筒を作り、枚数確認をしやすくするのも手です。
また、切手の枚数を切りよくしているのは、郵便局で購入する際、バラで買わず帯で買う事が重要な理由から、5枚単位で購入します。
特に、切手に500円が含まれるのは、郵送料がとにかくかかる事。→郵便料金
特別送達は
普通郵便(被告送達は定形外になるので、140円~400円はかかる)
一般書留 430円
特別送達 560円
の3つがオプションで含まれる事から、最低でも1072円はかかります。
被告宛に送る郵便は、定形外500グラム以内(400円)と仮定して、
定形外(400円)+一般書留(430円)+特別送達(560円)=1470円
という途方も無い料金がかかります。
つまり、この時点で500円切手は2枚使う計算となり、
470円分の切手として
82円×5枚+20円×3枚=470円分の額面をつくります。
少額の郵便切手を必要とするのは、裁判所書記官が特別送達をする際に、どんな額面でも郵送できる様にするのが原則になります。
※裁判所によって切手の準備する種類と枚数の指示がありますので、参考にして良いと思います。
裁判する際、一番やっかいなのは訴状作るのと同時に郵便切手をまとまった金額集める事が大変かもしれません。つまり、お金さえ渡せば裁判が自動的に始まるわけでない。のです。
4 訴状作り
これは、とにかく頭をひねる部分です。
事件名については、一般的に未払金回収事件とか、損害賠償請求事件などといったタイトルが多いようですが、この事件名に法則などは無く、どういう理由で提起するかだけです。
裁判所へ行ったとき、私だけ突拍子も無い事件名だった事に少し顔を赤らめましたが、まぁそれは本人訴訟である事を理解する上で十分すぎる事かもしれません。
訴状に関する書式
一定のひな形に埋めていくだけで結構ですが、多少なりのアレンジや実際の訴状などを参考に作れます。
ポイントとしては、
原告がだれで、被告がだれであるか?と言うことを明示していれば良いと言うこと。
○×簡易裁判所 御中
2xxx年xx月xx日
原告 おおくす
被告 田中一郎(仮称)
事件名 未払金回収事件
訴訟の趣旨
<添付書類>
等を準備し、同様な書面を3部つくり、1部は本人用、残り2部を裁判所へ提出となります。
少額訴訟の場合は、訴状と別に準備書面の提出を裁判所から指示される事があります。
当日は、準備書面の通り陳述いたします。と裁判官に伝えるだけで結構です。
※準備書面提出の指示は、裁判所によって異なりますので必ずしも必要とは限りません。
<証拠資料の準備>
証拠になる書面を、原告が提出する書面を「甲文書」と呼びます。
裁判所では、甲○○号文書と読み上げますので、こちらも手抜かり無く準備する必要があります。
5 訴状が受理されたら
もし今日(2015年1月5日現在)訴訟を提起しても、裁判は早くて2月下旬です。
実際のところ訴訟を提起して、受理されるまでに約10~15日程度かかります。
(書面に不備が無い前提としての期間)
その後、裁判に関する電話が2~3回ほど、裁判所書記官から裁判期日の打合せの連絡がはいります。
書記官から訴訟番号が発表されますので、必ず間違えないよう確認します。
※訴訟番号は「平成○○年(**)第**号」と言う名前で呼ばれます
裁判の日時は、午前か午後かどちらかですが、私の場合は午後の審理でした。少額訴訟の場合の場合は、即日結審を基本としており、裁判の時間は1時間~2時間程度です。
当然ですが、裁判当日は事前の予定は入れず、裁判終了後に入れるのが好ましいです。
(官公庁ですから閉庁が午後5時以降になる事はまずありません)
実際、裁判までの期間は約一月ほどあります。
6 裁判の席
少額訴訟の場合は、ラウンドテーブル(円卓)で裁判官を中心に
書記官(電話でやりとりした本人が立ち会います)
司法委員(外部の民間人の触れ込みですが、殆どが弁護士の模様)
が立ち会い、原告と被告が同じテーブルに座りその場で質疑を受ける形になります。
やりとりは、公開式ですが裁判の会話はすべて録音され、書記官は速記で裁判のやりとりを記録しています。
7 結審
判決などが言い渡され、勝訴・敗訴・和解のいずれかを裁判官が双方の前で判決を下します。
少額訴訟において、和解勧告をする事が多いらしく、よほどの事が無い限り勝訴・敗訴がつく事が無いと言います。
私の場合も、和解で決着しましたが、裁判費用は折半、交通費などについては双方自己負担。と言う判決です。勝訴の場合は、こういった諸費用も請求できるようですが、今回はそこまでに至りませんでした。
8 裁判を終えて
判決文は後日、郵送されるとの事ですが、提訴から判決まで最短で2~3ヶ月かかります。
弁護士を通さず、自分一人で訴訟するには相応の知識と入念な準備、及びあきらめないと言うことが大事です。
裁判なんてやらない方が良いですが、良く「訴えるぞ」とか言う話を聞く際、「やってみるならやってみろ、こっちはかまわない」という相手がいます。
実際、話し合いで済むならそれが一番いいんです。それで納得出来ないから裁判するだけですから。
先日の裁判の際、原告が被告からどういう理由で被害を被ったかは、すべて原告が立証しなければいけない。と裁判官から指摘されました。
つまり、裁判において、被害を被った理由をすべて原告が立証出来なければ裁判において有利にはならない。逆に言えば、被告が原告に対し、このような説明をした事を立証できれば、敗訴する事を意味するのです。
特に、言った言わないという水掛け論は裁判においてきわめて不利です。
裁判の意義は、損害賠償の請求にとどまらず、裁判する事で本気である意思を見せる事も一つの理由に当たるかもしれません。
少額訴訟を選ぶ理由は、判決をすぐに求められる事メリットがある反面、裁判を長期化させない。相手の出方を見る事が出来るなど、様々なメリットがあります。
ただし、訴訟内容にって、通常裁判に移行するなど、泥沼になる事はそれなりに覚悟しなければいけません。
個人で裁判をずっと抱え込むのは、ハッキリいいまして精神的に悪いです。
今回の裁判で私自身、白髪がかなり増えました。
裁判を乱発する事は到底良いとは言いません。
しかしながら、交渉が決裂したり、相手の態度次第では裁判する事を予告するのは悪い話ではありません。
ただし、金銭請求に関する事案に限られ、それ以外の案件であれば通常裁判として提訴する事も当然ながらありと考えます。
裁判が誰でも起こせる様になったとはいえ、まだまだハードルは高く、誰でも・もれなくにはほど遠い気がします。
本当に納得がいかなければ、裁判において白黒ハッキリさせる事は良い事です。
裁判する心構えは、「勝てるからやる」んじゃなく、「自分の本気を相手に見せるため」として臨む事が、重要な事といえます。
今年は、裁判を起こさないよう平穏な日々を過ごしたいものです。